現在、ちろりん農園には4歳の雑種の雄犬がいる。正式名「ポテト山珍太郎」(ポテチ、ポテちん、ポテなどと飼い主の気分で呼び名が変わるが、以下ポテチ)という彼の使命は、裏の鶏舎の200羽ほどのニワトリと菜園を、キツネ・タヌキ・イノシシ・ハクビシン・シカ・カラスなどの外敵から守ることである。ポテチは、わが家で犬を飼うようになったこの20年間で、4匹目の番犬である。
そこで、わが家の犬たちの歴史を少々。
1匹目のタロウは、畑に捨てられていた子犬で、飼い主には従順、外敵には勇敢な良い番犬であった。
数年後に、2匹目として次男が小学校で拾った子犬はロッキー。これも気が強く、名前の通り、なかなか頼もしい犬に成長したが、ある日突然出産してロキ子と改名。要するに、われわれ飼い主が数年間にわたって雄だと思い込んでいたという恥ずかしい話。
8歳で死んだ名犬タロウの後、ロッキーと並行して飼ったチープは、我慢強く穏やかな性格で、番犬としても役立ってくれたが、5歳でフィラリアを発症して死亡。このチープも、飼っている途中でメスと分かり、チーコと改名した。
ロッキーとチープの性転換の顚末(てんまつ)は、拙著『晴れときどきちろりん』(創風社出版)に詳しく書いたので、笑いたい方はそちらをどうぞ。
さて、チーコの後釜としてもらわれてきたポテチは、一言で言うと「しょうたれ」、つまり臆病者である。実のところ、歴代の犬たちの中では一番賢くて、飼い主の言うこともよく聞く穏やかな性格の犬なのだが、それらすべての美点を帳消しにするほどの“しょうたれ犬”なのである。
まず、番犬でありながら「ワンワン!」とほえてわれわれに何かを知らせてくれることは皆無に近い。声といえば、散歩の要求をする世にも情けない“音声”と、自治会放送に反応しての腹筋の入らない最低音量の遠吠えの2種類にほぼ限られる。
散歩中にほかの犬に出会うと、まず目をそらし、きびすを返して避けようとする。相手が自分の何分の一かのチワワでもだ。屋根の雪が落ちてさえ、「びっくー」とすくむありさまで、犬は飼い主に似ると言われることを思うと、もの悲しくなってくる。
さて、勇敢なロキ子姉さんが3年前に11歳で死んでから、鶏舎の守りはひとえに、このしょうたれポテチの双肩にかかっているのであるが、不思議なことに、彼の代になってからこれまで、ニワトリたちが動物に襲われたことはない。また、近くのほかの畑はイノシシよけの柵や網に囲われた“逆動物園状態”なのに、わが家の菜園はその必要もなく収穫ができている。
これも、ポテチが番犬として立派に働いてくれているおかげ、と言いたいところだが、日ごろのしょうたれぶりからしてそう断言できないのが少々つらいところである。