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キャベツとアオムシ

2008年06月13日

 大学の農学部を出てすぐ就農したので家庭菜園の延長のような野菜づくりも30年を超えたが、毎年何かしら新しい発見や驚きがあるのはとても楽しい……。が、いまだに学校や本で習ったことが真実かどうか疑問のままのものがある。それは、キャベツの玉ができてゆくまでの過程である。
 常識では、外葉が順々に巻いていって玉になるのだろうし、そう聞いているのだが、小生には、中心から玉がわき出してくるように見えて仕方がない。なぜかというと、キャベツを無農薬で栽培すると当然、虫たちが次々と葉をかじり、時として網目状に食い荒らされたりもするのだが、収穫時にはそれらの食いあとが分からなくなって立派なキャベツになっているからで、不思議でしようがない。
 さて、この食い荒らしの主役は、モンシロチョウの幼虫であるアオムシだ。モンシロチョウは「キャベツ蝶」ともいわれ、原産地の地中海沿岸からキャベツとともに日本に入ってきたという。産卵から1週間でアオムシになり、キャベツをガシガシ食べて2週間でサナギになり、さらに1週間後には成虫となって交尾し、産卵する……という一世代4週間のサイクルで絶え間なく畑に存在する。
 農薬を使わないちろりん農園では、アオムシを1匹ずつ手でつぶしてゆくので、畑を1周すると400~500匹の命を奪っていることになる。たった1個のキャベツを得るために、たぶん数十匹のアオムシをつぶす、農業は誠に罪深い仕事と言わざるをえない。
 それだけを見れば、人間とモンシロチョウでは、人間の方が圧倒的強者である。しかし、もしヒトという種が滅んでも、モンシロチョウは残るかもしれない。種という総体から見れば、彼らの方が勝者になり得るのだ。小生にとってアオムシは困り者の害虫であるが、一方で同じように命を持つ仲間でもある。だから、いつもかすかな心の痛みを覚えながら、また会おうなと呼びかけるのである。

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