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二宮金次郎は何の本を読んでるの?

2008年10月03日

 先日、いい香りに誘われて翠(みどり)小学校(伊予市双海町上灘)に出かけました。あいにくの雨でしたが樹齢100年を超すギンモクセイの花が咲き始め、学校の存在を誇示しているようでした。このギンモクセイは市指定の天然記念物で、枝や葉っぱの広がりが大きく、まるで「この木 何の木 気になる木」を彷彿させるような立派な樹木なのです。モクセイにはキンモクセイとギンモクセイなどがありますが、この木はギンモクセイで、キンモクセイに比べ香りは少々控えめですが、満開になると風向きによっては周囲1キロくらいにおうといわれています。ギンモクセイが香ると、いよいよ秋は本格的に深まっていくのです。

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【写真】翠小学校の大樹ギンモクセイ

 ギンモクセイの木の傍らに二宮金次郎の銅像が立っています。私が子どものころには母校である下灘小学校の校庭にもありましたが、今は野口英世の胸像に生まれ変わっています。また町内に3校あるもう一つの由並(ゆなみ)小学校にも二宮金次郎の銅像はあるのです。

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【写真】二宮金次郎の銅像(左は翠小学校、右は由並小学校)

 二宮金次郎は右手で背負(しょ)い子のひもを持ち、薪を背負って右手に持った本を読んでいるのですが、私は子どものころ、「何の本を読んでいるのだろう」と興味を持ちました。ある日、私は無謀にも銅像の台座によじ登り、そのことを確かめようとしました。ところが運の悪いことにそこを通りかかった校長先生に見つかり、校長室で正座のお仕置きをされました。
 校長先生「君は何であんな所へ上がったのか」
 若松少年「二宮金次郎が何の本を読んでいるのか知りたかったのです」
 校長先生「ばかたれ、あの本には『いろはにほへと』と書いている」
 若松少年「……」
でした。

 以来、私の心の中に何かもやもやしたものがくすぶっていました。大人になったある日、私は許可を得て翠小学校の二宮金次郎の銅像台座によじ登ってその本を見て驚きました。「いろはにほへと」どころか漢字が26文字、区切りもなく書かれているのです。浅学非才な私は読むことができず、それを拓本にとって校長先生に読んでもらいましたが、校長先生も読めませんでした。早速、知人を通じて県教委の国語の指導主事さんに読んでもらい、その意味を知ることができたのです。
 この【自悠くらぶ】を愛読されている人にだけこっそり教えますが、この本は中国の古書『大学』の一節なのです。書かれている文字は「一家仁一國興仁一家譲一國興譲一人貪戻一國作亂其機如此」とレ点も句読点も何もないのです。「一家仁なれば、一國仁に興(おこ)り、一家譲なれば、一國譲に興り、一人貪戻(たんれい)なれば、一國亂(らん)を作(な)す、其(そ)の機此(か)くの如(ごと)し」と読むのです。
 「一家の内が人の道を行えば、その国中の人々が人の道を進んで行うようになり、これに反して君主が自分の利益だけを貪るならば、その国中の人々は争いを起こすことになる」と説いています。

 私は何年か前、大阪の古本屋でノジの抜いた古い『大学』の本を手に入れました。今も大切に持っていますが、二宮金次郎の教えは今も私の心の中で生き続けているのです。
 学校に二宮金次郎の銅像があってもそのことさえ知らない先生がほとんどですが、いま一度その意味を子どもたちにも話してやってほしいと願っています。

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【写真】中国の古書『大学』と、その一節

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