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鈴木康博(すずきやすひろ)さん

2007年11月26日

 今夏、約5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『いいことあるさ』をリリースした鈴木康博。作詞・作曲・編曲・歌はもちろん、全ての楽器演奏、録音、ミックスにいたるまで、50代最後となるこの作品を、彼は、たったひとりで作りあげた。いわば“100%無添加アルバム”。彼が手作りにこだわった真意は? そしてこれからの人生設計は?

鈴木康博(すずきやすひろ)さん

――8月22日に新作アルバム『いいことあるさ』がリリースされましたが、世の中に放ってみての手応えや感触はいかがですか?
鈴木 今まで自分がやってきた音楽作りの手法を総括してまとめてみたような作品なので、これまでの作品の中でもすごく鈴木康博らしいアルバムになったんじゃないかと思います。今まで応援してきてくれた人たちの中に出来上がっている僕のイメージを崩さない、そして期待を裏切らない作品といいますか…。
――だとしたら、リスナーのリアクションやライブでの反応もこれまで以上に熱いのでは? 鈴木 そうですね。ただ反応の良さに関しては、世相といいますか、時代の潮流の影響もあるような気がします。実は、オフコースを熱心に聴いてくれてた世代というのは、僕らよりやや下の世代が多かった。つまり、そろそろ時間的にも経済的にもいろんな意味で余裕が出てきているせいか、また音楽を聴き出しているんですね。聴くだけじゃなく、バンドを組んだり新たに楽器を始めたり…。都市部より地方にその傾向が顕著で、ここ数年、またたくさんの人たちが聴きに来てくれるようになった。そういう人たちの期待を裏切らない作品でもあるので、客席もかなり盛り上がってくれてます。
――ということは、ここへきて鈴木さんがやりたいことと、鈴木さんに求められていることが一致してきているということですか?
鈴木 両者がたまたま寄り添った感じでしょうか。(本作は)やりたいようにやった結果ではあるけど、個人的にはもっと新しいこと新鮮なことをやってみたい気持ちもあるんです。ただそれをやり過ぎてしまうと前作のように“鈴木さんは何がやりたいの? どこに向かいたいの?”といわれてしまう(苦笑)。リスナーに楽しく聴いてもらうことはもちろん大事なことですけど、クリエイターとしての探究心はいくつになっても尽きないものなのでね。この先もずっと冒険心や好奇心は失くさずにいたいし、同じところに留まっていたくないといいますか、常に刺激的なことに携わっていたいんです。そうすることが、結果的に老け込まないことに繋がる気もしますしね(笑)。
――“今までやってきたことを総括”したアルバムということですが、これまでの音楽活動の集大成的作品にしようと思ったのはなぜですか?
鈴木 オフコースでデビューしてから今まで、フォーク、ロック、ポップス、ファンク…といろんなスタイルの音楽をやってきましたけど、どれも基本的には洋楽的ないろんなエッセンスを邦楽の様々なスタイルに置き換えてアプローチしていることには変わりない。そうした自分のキャリアをわかりやすくまとめてみようかな、という気分だった。何ででしょうね。時代の気運とか、周囲からのそれとない期待とか、あと来年60才を迎えるという年齢的なこともあるのかも知れない。
――詞、曲、アレンジ、歌はもちろんですが、すべての楽器演奏、録音、ミックスまで全部一人で手がけていますが…。
鈴木 何年か前にオフコース時代のリメイクやセルフカバーを作った時にも一人でやっているんです。今は、アナログの質感もデジタルで表現できるし、自分らしさを集大成する意味でもすべて自分自身の手でやってみたかったんです。
――すべてを一人で手がけたことも含めて、生身の鈴木さんを感じました。特に詞においては、夢を追い求めることの大切さ、時には人生を振り返ってみることの必要性、郷愁、社会の悪しき風潮に対する怒り、人生観…といった、現在のありのままの心情が描かれていることもあって、共感、心酔できる歌が多かったです。
鈴木 それしか出来ないからね。でも昔は恥ずかしくて、自分のリアルな感情を赤裸々にさらけ出すことができなかった。今それができているのは、何かきっかけがあったわけでもなくて、時の流れとともに、自然にできるようになってきたんですよ。以前は勝手に自己完結してしまうあまり、表現が抽象的になってしまって“何がいいたいの?”ってダメ出しされることもありましたけど(笑)、最近は、この年代だからこそ書ける表現、届きやすい言葉、伝わりやすい言い回しを大事にするようになってきましたね。考えてみれば、フォークの人たちは最初から心情を赤裸々に表現してきたわけだから、すごいなってあらためて思いますよ。
――ではこの新作こそ、鈴木さんらしさを凝縮したもっとも鈴木さんらしい作品であると?
鈴木 現時点ではそうでしょうね。だけど、これこそ目指してきたスタイル、というわけではない。自分にとって何がベスト(のスタイル)なのかは、いまだ模索中ですから。
――そうなんですか? ソロへの転向を決意したときには、既に明確なビジョンやスタイルをイメージできていたのかと思っていました。
鈴木 今だから言えますけど、あの頃はあのきらびやかに整ったサウンドと小田(和正)の声がオフコースの強い個性になっていっていたこともあって、バンド内に自分の居場所が見つけられなくなっていたんですね。僕としては、純粋にやりたいことをやれる環境を手に入れたかっただけなんです。だから、あの時からずっと今にいたるまで、自分らしさを探し続けている感じかな。これはこの先もずっと続いていくんだと思いますよ。
――来年60才を迎えますが、それなりの節目感はありますか?
鈴木 ありますよ。周りの同世代の友人の中にもリタイアする人がいますからね。でもクリエイターにリタイアはないし、現役で居続けられることの喜びを噛み締めながら、悠々自適に本当の自分らしさを探していけたら…とは思っています。

【プロフィル】
鈴木康博(すずきやすひろ)
 1948年、静岡県生まれ、横浜育ち。中学の頃からアメリカンポップスに影響されギターを持つ。東京工業大学時代に、友人・小田和正らとオフコースを結成。1970年「群衆の中で」でデビュー。バンドのギター&ボーカルとして一時代を築く。1982年6月の歴史的な日本武道館10日間公演後、オフコースを脱退。ソロ活動を開始する。ソロとしてアルバムを23枚リリース、またCMや劇伴音楽の制作等、幅広い活動を展開中。2007年8月に5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『いいことあるさ』リリース。また、2000年に結成された“Song for Memories”(鈴木康博、山本潤子=元ハイファイセット、細坪基佳=元ふきのとう)にもメンバー&アレンジャーとして参加。全国各地で精力的なライブ活動も行っている。

鈴木康博オフィシャルサイト
http://www.omgnet.co.jp/renewal_yassHP/yass/

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