肉親や僚友たちとの別れというつらい出来事が続いた一方で、追い風も吹き始めた。彼女のセカンド・シングルであり誰もが知る代表曲でもある「かもめが翔んだ日」が、思いもよらぬ舞台で復権の兆しをみせていた。
「そのアルバムを携えて30周年記念のコンサート・ツアーに出たその日に、ファンの方から事務所に連絡が入ったんです。その情報によると、千葉ロッテマリーンズの8回裏の攻撃前に「かもめが翔んだ日」が毎回応援ソングとして流れている、という。確認したら事実だったのでビックリして……」
球団のトレードマーク“かもめ”がタイトルに含まれていて、多くの人に知られている曲を応援歌に、という多くのマリーンズファンの要望が球団を動かしたのだという。
「そのうち、マリンスタジアムまで歌いにきてくれないかというオファーまで頂くようになって。せっかくなので、スタジアムで流れても違和感のない、闘争心をたきつけるようなロック調にアレンジを変えて歌ったんです。それが、千葉県限定で発売した「かもめが翔んだ日(スタジアム・バージョン)」。ちょっとした自慢ですが、「かもめ~」が流れた後のマリーンズは得点率が高いんですよ(笑)」
追い風は「かもめ~」の復権にとどまらず、今年に入って今度はNHKの“ユアソング”(放送開始80周年を機に、誰もが口ずさめるオリジナル・ソングを作って次世代に残すためのプロジェクト)向けの曲作り依頼が舞い込んだ。
「このお話をいただいた瞬間、父の曲を書こうと決めたんです。「それでも~」が母のために書いた曲だということを父も知っているわけですし、事実、30周年が母への思いとともに過ぎた印象が強い分、今回は父への思いを礎に作りたかったんです。その父の生き方を振り返った時にイメージしたのが“白”だった。なにしろ純粋で真っすぐな人でしたから。そのほかにも白色は、生まれた時に着る気ぐるみ、笑った時の白い歯、花嫁衣装……と、人は生まれてから死んで白い煙りになるまで“白”と深くかかわりながら生きますよね? そういえばかもめも白いなあなんて思いながら(笑)。それで、白という色の奥行きや尊さを父の思い出とともに表現してみました。自分の中では(デビュー曲の)「迷い道」を作った時の感覚に近かったような気がしています。独自の視点や観点からのとらえ方、言葉の選び方をしていますから。ほかに似た曲がないくらい個性的というか。その意味では、31年目にしてあらためて原点に返ったような感覚もありますね」