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シニアの快適な暮らしの総論(2)

2010年01月29日

 今回は、「快適に暮らすための住まい」の総論、その2です。
 前回、シニア世代が家を建てる場合は、家族のために、特に子どもや来客のためにプランを行うのではなく、自分たち二人のために、もっと言えば、夫婦でも趣味趣向が異なるのですから、それぞれ個人のために家を造ってほしいとお話ししました。諸先輩方に大上段から切り付けている感がありますが、思い切っています。
 今回は、シニア世代が家を建てる時は、生活の見直しの機会と捉(とら)えることがポイントという話をさせていただきます。これも前回同様に「若造が偉そうに言うことではない」と思いますが、住宅設計の実務からの実感なのです。

 さて、生活の見直しですが、実際にはどのようなことが必要なのかというと、まずはモノの整理です。この意義は「シンプルな生活を ~収納を考える~Vol.2」でお話しさせていただきましたが、「モノの整理は、人生を整理する事」の名言を収納カウンセラーの飯田先生から伝授していただいた者の責任として、これからも言い続けたいと思っています。

 モノを整理し処分するものを決める時に迷われることが多いと思いますので、必殺の方法をお教えします。これにはデジタルカメラが必要です。デジタルカメラでご自宅のあらゆるアングルを撮影してください。特に、台所や洗面所、寝室、玄関など生活感あふれる場所は念入りに撮影することをお勧めします。キッチンセットや食器棚、洗面化粧台などの住宅設備や家具等は扉を開けてから撮影して下さい。
 ここからが必殺の技です。自分の家の状態を画像で確認するのです。画像はパソコンの大きな画面で確認してくださいね。そうすると、見慣れた家の中なのですが、びっくりするはずですよ。えっこんなにモノがあるのと。
 この理由は、人は目で物を見ているわけではなく、脳で情報を感じ取っていますので、自分に甘く物事を見るようですよ。「片付いているんだ!」という。しかし、写真は客観的な事実が写りますので、「片付いていませんよ!」と情報が入ってきます。また、「汚れているよ!」とも言われるかもしれませんので、結構きつい作業になるかもしれないので、覚悟をしてください。まあ、結婚30云(うん)年の生活の垢(あか)落としでチャレンジしてみてください。「ああ、生活を見直そう」と一歩踏み出すこと間違いなしです。
 生活の見直しでもう一つ重要な作業があります。それは身体機能の変化や特徴を知り、それを受け入れることです。
 身体機能の変化には、「低下(老化)」があります。身体能力は20歳代がピークであることは避けられない事実で、それ以降は低下していきます。これは視機能や聴力等も同じです。白内障は40歳代から始まっていますし、聴力は高音から聞こえなくなっていきます。これは、「モスキート音で屯(たむろ)する若者を撃退」で話題になりましたので、ご存じと思います。ですので、これらの機能低下を受け入れて、それを補うように住環境を整えていくことが必要です。

 身体機能の低下を補うポイントは、やはり不用意な段差は作らないことです。そして同一階で日常生活が賄えるような間取りが肝心です。同一階というのは1階に限らず2階なら2階でほとんどの日常生活が送れるということです。
 水回りにはちょっと多めのスペースを確保することや、建具は引戸を多用すること等もポイントで、温熱環境のことは拘(こだわ)ってお話ししましたので、丁寧な配慮が必要なのは言うまでもありません。
日々進歩するトイレのデザイン
【写真】
トイレのデザインは、日々進歩しています。皆さんの「身体機能の如何(いかん)にかかわらず、快適に使いたい」というリクエストに応えることができますよ。

 また、身体機能の特徴には「成長」もあります。それは「結晶性知能」です。
 結晶性知能とは、過去の学習や経験で積み重ねられた知識によって育(はぐく)まれ、知恵の源となる能力のようです。この能力は、60歳ごろまでは上昇し、人によってはそれを生涯維持し続けると言われています。ただ、この知能は蓄積された知識によって成り立ちますので、維持や上昇させるためには、常に新しいことにチャレンジする気構えが必要です。言い方を変えれば「やる気を出すこと」です。
 やる気を出す環境となると、個の空間の確保が必須となります。人は好きなことには幾らでもやる気が出ます。しかし、それを行うのに準備や後片付けに手間が掛るとついつい億劫(おっくう)になり、モチベーションを維持することが難しくなります。その理由の一つにシニア世代には「時間がある」が考えられます。
 会社員の時代は、仕事や家族サービスで自分の時間は貴重でした。なので、集中して好きなことに取り組み、準備や後片付けも特に苦ではありません。それより楽しみでもあったかもしれません。しかし、シニア世代になると時間はゆっくりとあります。ですので、明日でもいいかなぁと思うと、お尻に根が生えてしまいますね。まして準備や後片付けに手間がかかるとなると…。
 そこで、やる気を絶えず空間に漂わせるために、片付けなくてよい個の空間を確保しましょう。これは夫婦共同の空間であってはなりません。あくまでも一人っきりの空間です。そして、お互いの空間は「気が感じられる距離」を保つことが基本ですのでお忘れなく。
「個の空間」に天窓からの光を取り込む
【写真】
「個の空間」に天窓からの光を取り込むと、非日常的な日差しを感じられ、室内に「やる気」が漂います。


 今回で私の好き勝手なお話は終わることになりました。2年半でしたが、パソコンの前で「なにをお話ししようか」と考えるのは楽しい時間でした。また、文字として残るので好き勝手を言いながらも根拠のあることに絞ったつもりでした。ですので、再勉強をしなければならないきつい時間でもありました。今後も機会があればチャレンジしたいと思っています。関係者の皆さま、お世話になりました。ありがとございました。

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