メタボリックシンドロームという言葉は、一般の人々でも知っている有名なシンドローム(症候群)となりました。診断は、まず、肥満であることを必須条件とし、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常の幾つかを合併するとこのシンドロームとなります。このシンドロームにかかると脳血管障害や心血管障害を発症する頻度が高くなります。患者さん自身の責任で予防や治療が可能なため注目されている訳です。現在、日本には、40歳から74歳までの中高年者の男性の2人に1人、予備軍を含め日本には約2700万人がメタボリックシンドロームの状態です。
古代人には存在しなかったメタボリックシンドロームが、現代社会でどうして増加しているのでしょうか。図に示しますように人類は、約10万年前にアフリカのエチオピア付近で、4足歩行から2足歩行になり誕生しましたが、約50年前までのほとんどの期間は、飢餓、塩分不足などの身体的ストレスに暴露され、さらに闘争などの精神的ストレスを受けてきました。この期間を生き延びて行くために重要な遺伝子群では、空腹・飢餓状態において効率よく血糖・脂肪や血圧などを上げる傾向にある遺伝子、即ち倹約遺伝子であると考えられています。10万年前から約50年前までは、一般集団でのメタボリックシンドロームの有病率は皆無であったと考えられます。ところが、約50年前から、飽食の時代、車社会になって肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧などが急増してきました。つまり、5000世代(約10万年)のうちの2世代(50年)で生活環境が逆転した中で、飽食の状態においても効率よく血糖・脂肪や血圧などを上げる傾向にある遺伝子を持つヒトが多いため、メタボリックシンドロームが増加したわけです。
約50年間で逆転した悪い現象には、人類の英知を結集すれば、解決策は出て来ると私は考えています。例えば、食事療法や運動療法とともに、現代社会で不要となった倹約遺伝子の働きを抑える方法を見つけ出すことなどがあります。
