認知症の症状は、大きく2つに分けることができます。図に示すような「中核症状」と「周辺症状」です。物忘れの症状(記憶障害)は中核症状に入ります。

認知症として診断するには、新しいことを覚える能力「物記銘力」の低下、あるいは知的機能の低下のほかに「失行・失認・失語・実行機能障害」のうちの1つ以上の症状が必要です。
実行機能障害とは、買い物ができなくなった、金銭の管理ができなくなった、料理のレパートリーが減ったなどの症状で、よく認められる症状です。失行の一つの着衣失行も早期に認められます。具体的には季節に合った服が選べない、あるいは服を着る順番が分からなくなるなどの症状です。
こうした症状のために、家庭内や職業上、集団で生活するとき、つまり社会生活に支障があることが認知症の必須条件です。
社会的には適応し、自立しており、自分で自分自身の物忘れを自覚している場合は、軽度認知障害(MCI; Mild Cognitive Impairment)と診断されます。軽度認知障害の方は、1年後、4割は正常に戻り、1割が認知症に進展するとの報告があります。また記銘力障害や知的機能障害の中核症状には、ドネペジル(商品名アリセプト)を服用すれば進行を抑えられる場合があります。
認知症の患者さんを介護する場合に最も大変なことは、図の円の外側の周辺症状です。以前は、問題行動と呼んでいましたが、最近は周辺症状と呼ばれています。
この中でも介護者が困るのは、物盗られ妄想、暴言・暴行、不潔行為などです。財布や通帳など大切なものを隠しておきながら、隠したことや隠した場所を忘れてしまって、誰かが盗んだと訴えるのが「物盗られ妄想」です。この場合、患者さんを日ごろから一番介護している方が犯人にされる場合が多いので、困ったことになります。ほかに、すぐ怒りやすくなる易怒性(いどせい)、亡くなった家族が出てくる幻視、あるいは意欲が低下するなどのうつ状態には、よく効く薬(非定型抗精神病薬や抗うつ剤)がありますので、早めに医療機関を受診してください。