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シニア世代と音楽

2008年03月19日

 これほど音楽が、アナログからデジタルへその電気電子技術の進化とともに変わるものだとは、想像もつかなかった。聞くこと、演奏すること、創(つく)ること、どれをとってもだ。(もっとも「進化」というには、アナログに慣れ親しんだシニア世代にとっては、これらをそうともいえないという人も多いとは思うが……)

 まずは「聴くこと」についての変化をたどれば分かりやすい。初めは蓄音機からだった。電気ではなく、すべて機械式。ビニールのレコード盤をゼンマイ仕掛けで回し、先のとがった金属製の針で音を拾って、木箱のサウンドボックスで物理的に拡声させて聴く。「見よ東海の空明けて……」なんて軍歌を聴いた覚えがある。もちろんモノラル。
 それから間もなくすべてが電気化されて、居間にステレオ3点セットがデンと置かれるようになる。あるいは、マニアの人はプレーヤー、アンプ、スピーカー、それぞれメーカーを選んで好みのセットを組んで音を楽しんだ。部屋の中で酒など飲みながら、である。メディアはほとんどがレコードだったが、録音再生ができるテープレコーダーが普及して、それを小型化したウォークマンが出てからは、自分の好きな音楽を部屋の外で歩きながらでも聴けるようになったのである。ここまではアナログ時代。
 CD、MD といったデジタルメディアが登場するとステレオセットも小型化してゆく。マンションでの生活にフィットするように、そんな社会事情に同調するようでもあった。そして今や、パソコン、インターネット、携帯電話の普及とともにメディアが無くなりつつある。ケースもアルバムジャケットもない。音をダウンロードするのだ。
 MP3 プレーヤーにイヤホンあるいはヘッドホンで聴く。あるいはパソコンにスピーカーをつないで聴く。こうなってくると、そろそろついていけなくなりそうではないか。時代に合わせて、レコードでしか聴けない音はあきらめ、アナログ時代の音楽をなんとかCD にシフトしてきた我々世代の多くは、せめてCD が無くならないことを願う。確かにパソコンでもCD は聴けるが、でも少し大きめなスピーカーで部屋でゆったりと音楽を楽しむ、という方向に世の中は進んではいかないものだろうか。これから一体何で音楽を聴けばいいのだろう。そういう意味で、古い機材でも使えるように残しておかなくては、と思う。

 「演奏すること」の方はといえば、詳しい説明は省くとして、キーボードでほとんどの楽器の音は出せる。ドラムもベースもギターもだ。そして「創ること」。これは音楽の音源を創る、という意味だが、ミュージシャンたちが大きなスタジオに集まって録音するという時代から、今やホームレコーディングでも音源が創れる時代になった。どうもすべてのカギはパソコンの機能の進化にあるようだ。さまざまなことがパソコンを中心に回り始めている。

 しかしシニア世代は、そういった急速な変化とは少し距離を置いて、心を癒やすために音楽を楽しみたいのだ。パソコンや携帯にかき回されたくはない。あのころの楽器や生の声は昔も今も変わりはない。変わりのないものに安らぎを覚える。そんな楽器を使って、みんなで演奏したり歌を歌ったりして心を通わせる時間が欲しい。それがこれからの音楽の楽しみ方の一つになるのは確かだ。「俺たちの時代の音は今にだってあるんだ」と主張するように。

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