ことし4月から、離婚時に厚生年金や共済年金を分割する新制度が始まりました。年金分割は年金の最大半分までの受給が可能になるとあって、熟年女性にとっても関心が高く、社会保険事務所への問い合わせも増えているようです。しかし中には「夫のすべての年金の最大半分を受け取ることができる」と、誤解している人も多いようで、離婚を考えるケースでは早めに受給可能な金額の確認が大切です。
現在専業主婦のD子さん(昭和24年8月生まれ)、夫は(昭和24年5月生まれ)会社員で、2009年3月に定年退職の予定です。D子さんは離婚を考えることもありますが、その後の収入や生活費がどうなるかを心配しています。D子さんのケースで年金分割はどうなるのでしょうか。
D子さんの夫は60歳から厚生年金報酬比例部分(連載1回目表1参照)を年間で120万円、さらに65歳からは基礎年金の約79万円を受け取れる予定です。D子さんが夫の退職後に離婚したとしても、D子さんが受け取れるのは65歳からの年金額合計199万円の半分ではありません。基礎年金は分割対象にはならないからです。では厚生年金の120万円の半分を受け取れるのでしょうか? いえ、それも違います。誤解の多いところですが、分割対象になるのは実は「婚姻期間の厚生年金の報酬比例部分」のみなのです。
実際に分割できるのは図4のように、結婚していた期間の保険料納付記録に基づく額で、夫の同意があれば最大半分まで分割することが可能です。(2008年4月以降の離婚では夫の同意がない場合でも、その後の専業主婦の期間分については5割可能)
図4:年金分割のイメージ (妻は婚姻期間中の厚生年金加入期間なしのケース)

また、分割された年金は離婚後すぐ受け取れるのではなく、自身の厚生年金の開始年齢から受け取ることができます(連載1回目表1参照)。厚生年金の期間がない人は、分割された年金の受け取りは自身の基礎年金開始の65歳からになります。
さて、社会保険事務所の試算では、D子さんは(夫の合意があった場合最大で)月額4万円をD子さんの独身時の報酬比例部分の年金と一緒に、60歳から受け取ることが可能と分かりました。また65歳からは基礎年金と合わせて月額11万円程度を受け取れることが分かりましたが、予想外に少ないことに気づきました。
月額11万円程度では、ちょっと生活が厳しいかなと感じたD子さん。離婚については、もう一度考え直してみるようです。だんなさんが知ったら、胸をなでおろすでしょうね。
年金分割は女性の老後保障を考えると、意味の大きいことですが、離婚にともない年金だけで生活できる人は少なく、ほかの収入や資産なども含めた総合的な生活設計が大切です。